湯炊きごはん

今日の懐石料理講座は「向付」の魚を事前に処理しておいた為、時間に余裕があったので「湯炊きごはん」の説明と実習をした。試食が出来そうな時間の25分前から、ご飯を炊き始める。炊く時間は電気炊飯器より短い。
私の知らないずーっと昔に白いご飯はご馳走だった。父の時代は「銀シャリ」と呼んだらしいが今は色付けた「パエリヤ」「サフランライス」などがご馳走と思われがちだ。その父の時代もうんと遡って古くから、懐石のご飯は白い炊き立てが「おもてなしの気持ち」を表す料理の一つになった。
お客様に炊き立てをまず一口差し上げる。蒸らす前にお出しするので、やや水っぽさを感じる。汁かえの時に軽く二杯目、焼物あたりに三杯目と進める。三杯目までのご飯の風味の変化を楽しんで頂く。一杯目は蒸れていないが、三杯目には丁度良い蒸れ加減になっている。
自宅で茶事をする場合、ほぼ炊飯器で炊くことになるが、凝った亭主は昔ながらの「湯炊き」をなさることがある。部屋を整え、茶道具を揃えて、懐石までご用意下さるのだから、客としては、そうした手間が掛かっていることを見過ごしてはいけない。今日の講座は亭主の手間に気付き、ご苦労を思い量る為のお勉強でした。